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2005年 12月 23日
第二の人生
 ロシア極東地域で日本の中古車が大人気だという話は有名だ。実際サハリンでもハバロフスクでも日本語のロゴマークそのままのトラックなどを普通に見かけることができた。ユジノサハリンスクでは、右側通行なのに、道を走る乗用車の八割は右ハンドル車、つまり日本車だった。
 ただし最近、ロシア政府が日本からの輸入中古車に対して、関税を大幅に引き上げることを決定したため、かつて見たような光景も、やがて変わっていくのかもしれない。

第二の人生_a0021929_5205739.jpg2000年、ユジノサハリンスクにて。ロゴマークそのまんまで、こんなところで活躍しているなどということを、かつての持ち主は知ってるのだろうか?









  そんなサハリンでは、車の盗難が非常に多いそうだ。なるほど車庫は、ちょっとやそっとでは開けられそうもない重量感溢れる南京錠と鎖で、ぐるぐる巻きに鍵を掛けられていた。それでも盗まれるケースが後を絶たないという。とはいっても小さな島だから、そのまま売りさばこうとすれば、すぐに足がついてしまう。ではどうするかというと、すぐにばらばらに分解してしまうそうだ。部品にすれば大丈夫ということらしい。

 サハリンでは、ポロナイスクという地方の町まで足を伸ばした。ユジノサハリンスクから鉄道で八時間、北緯五十度線の手前だ。ポロナイスクは、第二次大戦前に祖父母が住んでいた町だった。だが、かつて敷香(しすか)と呼ばれていた頃の町は戦争によって破壊されてしまったと祖母は言っていた。そしてその通り、歩いても歩いても旧ソ連時代に建てられたとおぼしき、ぼろぼろの四角い灰色のアパートが続くばかりだった。唯一、旧王子製紙の工場だけが、昔日の町を思わせる雰囲気を漂わせていたのが印象的だった。

 ポロナイスク駅のそばにささやかな市場があった。冬にさしかかった頃で、野菜は大した種類もない。少々の缶詰類と乾物、冬向けの衣料品がさらっと並んでいるだけ。まあ普通の品揃えだよなと思いつつ、ふと片隅のほうを見やる。しょうゆで煮しめたような色の汚れたコートを着た数人のオヤジたちが何かを売っている。粗末なむしろの上には、スパークプラグにバッテリー、ファンベルト、バンパー、ヘッドライト……もしかして、などという余地を挟むまでもなく、それらはランダムに並べられた自動車部品の数々だった。
 もちろんそれらは「まっとうな」自動車部品に違いない。部品のみなさまにしてみれば、たまたま立ち寄った外国人旅行者に盗品の濡れ衣を着せられるのは全くもって心外、だろう。売り場スペースを見た瞬間、とても写真撮影する気にはならなかったほどヤバげな雰囲気を感じたが、これは単に事前の話から妄想がふくらんでしまった結果だろう、と思いたい。
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線路脇を歩いて、ポロナイスク駅に向かう。列車の本数が少ないからこういうことができる。
by terrarossa | 2005-12-23 05:39 | 見聞録


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