2010年 10月 27日
2010年もまた、ドイツのサッカーを見に行く・その5
◆遠かった。雨だった。寒かった。 
 9月25日(土)は、ブンデスリーガ第6節・VfBシュツットガルト対バイヤー04・レバークーゼン観戦のため、シュツットガルトへ遠征した。
 これまで、この季節のドイツにしてはぬるい天候が続いていたので、すっかりなめてかかっていたのが裏目に出た。デュッセルドルフからシュツットガルトまではICEで4時間弱。南下したはずなのに、シュツットガルト駅に降りた途端「寒!」、しかもばんばん雨が降っている。あまりの寒さに、駅前のカウフホフに飛び込み、ストール一点お買い上げ。ドイツに来てすぐ、レバークーゼンのマフラーを買ったというのに、かさばるからと持ってこなかった。馬鹿すぎる…ああ余計な買い物をしてしまった…
 ふと2年前の、バイアレナ初観戦時のことを思い出した。あの時も、防寒対策が甘すぎたため、買う予定のなかったマフラーを購入せざるを得なかったんだった。
 そう、以前の失敗から何も学んでない自分であった。とほほ。

 とほほな事態はまだ続く。シュツットガルトのホームスタジアム、メルセデスベンツ・アレーナは、以前あった陸上トラックを取っ払って、専用スタジアムにするべく、只今絶賛改装中。ということでこの時は、片側のゴール裏席がまるまる使用不可能の状態だった。いやーな予感はしたのだ。そしてその予感は当たる。案内表示に従って、スタジアム沿いの歩道を歩いていたらいきなり止められ、「こっから工事中だから、迂回してよね」。来た道を引き返すだけで相当な距離だというのに、そこからまた、どこまで迂回すりゃいいんだよゴルァ!と思わず逆ギレしたくなるほどスタジアムがどんどん遠く小さくなっていく方向に誘導され、雨の中、20分は歩いただろうか。ようやく入口に到着。長かった……

a0021929_1312312.jpg 冷たい雨が容赦なく吹き込んでくるスタンド。濡れて身体がどんどん冷えて、凍えてがちがち歯は鳴るし、洒落になんないレベルの寒さ。駅前で買ったストールは……焼け石に水、ってこういうことだったんだって思い知らされたよ……
 その上、噂には聞いていたがここのスタンド……全面改装するってんなら、この傾斜の緩さをなんとかしてくれー。前の席の人の頭が邪魔になるレベルの緩さってどうよ。こんなんだから、当然、今自分が座っているバックスタンドの端なんて、後ろへ行くほどピッチが遠い、遠いよ……(涙)

a0021929_1322380.jpg もともと荒れ気味のピッチに、嫌がらせかというくらい雨がばしゃばしゃ降っていて、グラウンドコンディションは最悪。見ている側も濡れるわ寒いわで散々だったが、こんな状態でプレーする選手の皆さんはほんとに大変だー。スリップして転倒しそうになっているシーンが頻発、怪我だけはすんなよと祈るばかり。
 コンディションと言えば、ホーム、シュツットガルトの状態もかんばしくなく、5節終了時点でリーグ16位。
 対するレバークーゼンは上位とはいえ、ずっとアレな内容が続いている。正直、微妙だなあと、あまり期待せず見ていたのだが、いざ試合が始まると、悪天候でボールコントロールもままならない中、小気味よくパスがつながっているではないか。バルネッタとレナトが躍動!デルディヨクのオサレパスも最高。そしてディフェンスが安定してる!
 なんというか、「いい時」のレバークーゼンだった。……というより、シュツットガルトのプレーに全く怖さがない。これは相当重症なんではないか、と素人は思うのだった。5節でボルシア・メンヘングラードバッハ相手に7得点もたたき込んだあのゲームは、一体なんだったのだ。
 終わってみれば、1-4でレバークーゼンの圧勝。シュツットガルトは再びリーグ最下位に転落。厳しい……

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 アウェイ席前まで挨拶に来てくれた、ずぶ濡れドロドロの皆さん(左から、バリッチュ、カドレツ、ライナーツ、ヨルゲンセン、アドラー、ロルフェス、バルネッタ、フリードリッヒ、シュワーブ、ヒーピア選手)。シュツットガルトまで来てよかった、と思った瞬間。

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# by terrarossa | 2010-10-27 01:41 | サッカー
2010年 10月 24日
2010年もまた、ドイツのサッカーを見に行く・その4
◆キャプテン復帰を勝利で祝う 
 9月22日(水)も、バイアレナで試合を観戦した。レバークーゼンは、9月16日のヨーロッパリーグ戦以来、19日、22日、25日と中二日での試合が続く。短期間でたくさんの試合を観戦できたこちらとしては非常にラッキーな日程だったけれど、選手のみなさんは、プロとはいえ、コンディションの調整が大変だったことだろう。
 この日のカードはブンデスリーガ第5節、バイヤー04・レバークーゼン対アイントラハト・フランクフルト、20:00キックオフの試合だった。

a0021929_21593519.jpg 試合当日、夕方のレバークーゼン・ミッテ駅前。駅のホームには、警官がたくさんいて物々しい雰囲気だったが、バイアレナへ向かう出口とは反対側にあるショッピングモールのあたりは、ユニフォームを着たファンがたくさん歩いていたものの、穏やかでのんびりした感じ。

 日が傾きかけてきたので、スタジアムへと向かう。レバークーゼンのファンに混じって、フランクフルトのユニフォームを着たファンもぞろぞろ歩いている。その中に、背番号20、「INAMOTO」を着ていたニイサンがいたのでびっくり。高原じゃなくて稲本ってところが渋い。もう移籍してしまった地味なポジションの外国人選手を贔屓にしてくれていたファンがちゃんといるんだなあ、と思うとちょっとうれしかった。
 今回の席も運よく空いていたメインスタンドの前目の位置。ちょうど、選手、コーチの皆さんがピッチチェックに出ているところだった。だが、そのピッチ上では、背中を掻く者あり、音楽鑑賞している者あり、雑誌(この試合で配られるBayArena Magazinか?)を熟読している者あり。一体なにをチェックしてるのだろう(左から、バルネッタ、カプラン、ロルフェス、ヘルマンコーチ、デルディヨク、レナト・アウグスト、ヴィダル、ヴィダ)。
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 なにやら楽しげなバルネッタとヴィダル。後ろの黒いジャージ姿は新加入のシドニー・サム、背中を向いているのは多分ブラク・カプラン。
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 レバークーゼンのマスコット、ブライアン。ごつごつもさもさ。ドイツのキャラクターはだいたい可愛くない。きっとドイツ人もそう思っている。なぜドイツでハローキティが大人気なのか、すごくわかるような気がする。

 肝心の試合に関しては、3日前の前節に引き続いて奥歯に物が挟まったような展開を見せ、しかしフランクフルトも同様に奥歯に物が(以下略)。なんといっても、キースリンクとヘルメスという二大看板FWが、前節の試合で傷んで出場できなくなってしまったというのが大打撃、というだけでなく、昨季の後半戦のデジャブ?傷んでないはずの守備陣が……(汗)。だもんで、ゴールキーパーのアドラー大活躍(大汗)。
 確かに、バルネッタは速いし、上手いし、キレキレだった。前半早々にベンダーがゴールを決めたのも素晴らしかった。だがその10分後に、好調のゲカスにさくっとゴールされ、あっという間に試合は振り出しに戻ってしまう。ゲカスさん、あなたのレバークーゼン時代とは、いったいなんだったのか。
 そして後半、ついにロルフェスが登場。満を持してのキャプテンの復帰に、スタジアム中から万雷の拍手がわき起こる。思えば長い長い離脱だったよなあ……
 その後も、互いに攻め合いながらも決めきれない展開が延々と続く。しかし、あーまたドローかよ、と覚悟していた試合終了間際、ペナルティーエリアでヴィダルが倒され、PK獲得!チリ代表選手であるヴィダル本人が、「チリの鉱山で地下に閉じこめられている皆さんに捧ぐ」PKを見事に決め、レバークーゼンの劇的勝利となったのだった。うれしいが疲れたよ、見ている方は……
a0021929_2222075.jpg 試合後、報道陣に囲まれるフリードリッヒ。負け試合のインタビューを受けるのはディフェンダーの仕事、なんだそうだが、この日は勝利のインタビュー。よかったねえ。

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# by terrarossa | 2010-10-24 22:12 | サッカー
2010年 10月 20日
2010年もまた、ドイツのサッカーを見に行く・その3
◆裸族健在 
 9月19日(日)、レバークーゼンのバイアレナで、ブンデスリーガ第4節、バイヤー04・レバークーゼン対1.FCニュルンベルクの試合を観戦した。
 今回バイアレナで観戦した試合のチケットは、クラブの公式サイトから購入した。レバークーゼンのオンラインチケット販売には「print@home」というオプションがあり、pdfファイル形式のチケット(購入者の氏名が記載されている)が電子メールで送られてきて、それを自分でプリントアウトして使う、というもの。もう海の向こうからチケットが無事送られてくるかどうかをはらはらしながら待つ必要はない、たいへん有り難いシステムなのだ。

a0021929_0275661.jpg 約1年ぶりのバイアレナ、ちょっと早めに席に着く。1席だけぽっかり空いていた、メインスタンドの最前列。
 目の前で、ハインケス監督がインタビューを受けていた。近い……
a0021929_0282529.jpg 復帰間近のロルフェス選手は、この節までチーム広報担当(?)をこなしていた。関係者の方々となにやら談笑。

 ニュルンベルクは、2009/2010シーズン、ブンデスリーガ(1部)に昇格して2シーズン目。ここ最近、数シーズンごとに2部に降格しては、1部に戻るということを繰り返している。
 実はニュルンベルクの試合を見るのはこれが初めてではない。2008/2009シーズンのツヴァイテ(2部)の試合で、SVヴェーエン・ヴィースバーデンとの対戦を見たことがある。そして、それが記念すべきドイツでのサッカー初観戦だった。
 あれからヴィースバーデンはドリッテ(3部)に降格し、ニュルンベルクはふたたびブンデスリーガに昇格した。現在のメンバーは、ツヴァイテだった頃からは大きく入れ替わっている。監督も交代しているので、2年前とは別チームと言っていいだろう。
 ただし、当然だが、ファンは同じファン。試合中、ふとアウェー席を見やると、やはり肌色。裸族健在。そういえば、ヴィースバーデンのブリタ・アレナでは発煙筒を焚いていた輩がいたな……
 遠目肌色なウルトラスの皆さんは、この日も太鼓をどんがらどんがら叩きながら、大変気合の入った野太いチャントを響かせていたよ……
 その応援っぷりにやられちゃった訳では断じてないんだろうが、この日のレバークーゼンは、いいところまで攻めつつも最後まで決めきれない。手元に残っている観戦メモには、「30分も経過したのに両者シュート1本も無し」はまだいいとして、「香川すげー」(同時刻開催されている他会場でゴールが決まると、そのたびに場内の電光掲示板でそれを知らせてくれるのだ。この時は、シャルケ04対ボルシア・ドルトムントの試合がゲルゼンキルヒェンで行われていて、今季ドルトムントに新加入したばかりの香川選手は、なんとその重要なアウェイでのダービーマッチで2ゴールも決めたのだった。……てのはメデタイことだが、自分が見ている試合のメモじゃないだろうよ、それ)だの、「キーパーのユニがどっちも黄色×黒で紛らわしすぎ」とかいった、割とどうでもいいようなことや、「なぜ外すヨルゲンセーン!!」「何やってんだライナーツ!」「そこでバックパスばっかしてんじゃねー○○!(←自粛)」とかいった野次めいた殴り書き、さらに「うおぉおぉー!」とか「おうあー!」とかいう感情にまかせた意味不明の雄叫びだけしか残っておらず、とても後から理路整然と試合を振り返られるような内容にはなっていなかった。ニワカ素人の限界がここで早くも露呈。とはいえ、それくらい煮え切らない感が際立っていたのは確かだった。自分だけじゃなく、そこに居合わせたファンも同じように感じていたらしい。結局はスコアレスドローで終わったのだが、あまりにもふがいない試合っぷりに、試合終了と同時に観客席からは激しいブーイングが。今シーズンのレバークーゼンは、リーグ戦と共にヨーロッパリーグにも出場しているので、過密日程でタイヘン、と言えばそうなのだが……

 そして、この試合で何よりも、何よりも痛かったのが、試合開始早々、チームのエースFW、キースリンク選手が大怪我してしまったことである。長身でありながらスピードもあって足元も上手く、ポストプレーも得意、潰れ役も厭わないという、いろんな意味で万能型のFWである彼は、毎試合毎試合、気の毒なほどよく蹴られガンガン削られてはつっ転がされている。にもかかわらず、そのたびに、文句も言わず気丈に起き上がってプレーに戻る、FWの鑑みたいな選手なのだ。それまで大きな怪我がなかったのが不思議なくらいだが、その秘密は、転倒の仕方にあるのではないかと思っていたところだった。「べしゃっ」という擬音をつけたくなるような、五体投地かよと思わずツッコミたくなるような、身も蓋もないあの派手な転び方が、非常に効いているのだ。ファールもよくもらえているし。
 だがこの時は、相手選手と交錯して足が引っかかったところで、いつもの転び方にはならず、変によじれた状態で横倒しになってしまった。そして、いつもなら少しの間をおいてむっくり起きあがり、再び走り出す彼が、地面に横たわったまま片手を高く挙げたのだ。すぐに、これは大変なことになったと思った。診断は、左足靱帯の断裂。おそらく、彼の選手生活の中でもこれだけの大怪我は初めてだろう。ドイツ代表選手でもあり、昨シーズンはリーグ得点王を最後まで争っていたスター選手でありながら、気どらず愛想のいいキースリンク選手は、練習場では大人気だった。彼のたくさんのファンと共に、一日も早い回復を祈るばかりだ。

a0021929_0415699.jpg 試合が終わって駅に行ったが、電車がなかなか来ない。
a0021929_0422042.jpg ふと横を見ると、若者がひとり、呆然とした様子で佇んでいた。その全身は、キースリンクでコーディネートされていた。心中お察し申し上げます……(涙)

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# by terrarossa | 2010-10-20 01:06 | サッカー
2010年 10月 18日
2010年もまた、ドイツのサッカーを見に行く・その2
◆家一軒丸ごと貸します……?
 ドイツのホテル宿泊料金は、非常に高い。特に秋は、各都市で国際見本市が多数開催されるため、ただでさえ高い料金が極端に高騰する。ということで、初めてのドイツ旅行時からB&B(ベッド・アンド・ブレックファースト)のシステムを利用している。最初は経済的理由からそうしただけだったが、回を重ねるごとに、すっかり自炊生活にはまってしまい、今回も貸部屋紹介サイトを通じて「家具、キッチン付きアパートメント」という所を借りることにした。一昨年は個人で所有しているアパートの一室、昨年は不動産業者が管理しているアパートを借り、たいへん快適なドイツ滞在ができたので、今回もそういうイメージを持ってデュッセルドルフに出向いたのである。家主さんとのうっすら英文メールのやりとりを何度か行い、互いに何者であるかもうっすら確認。地図をたよりにアパートを目指すと、そこはヨーロッパの町中らしく、両側に中層階の集合住宅が連なる通りの一角。過去宿泊したスタイルと同じような感じだった。入口を開けてもらうと、そこには家主のジゼルさんが待っていて、笑顔で歓迎してくれた。「さ、こっちよ」と建物から再び外へ案内される。

 中庭にはアパートからは独立した二階建ての四角い建物。アジサイやバラの花が咲く庭、池には睡蓮。小さいながらもきちんとした庭だった。そうかここが家主さんの家か。

a0021929_2175248.jpgどこを撮ってもたいへん絵になる庭。

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 そのまま建物の中へ案内された。ざっと二十畳ほどの広さのリビング&書斎が広がっている。リビングの奥には二階に続くらせん階段が見える。壁の棚には本やCD。座り心地の良さそうなカウチや籐の椅子もある。
 「二階がベッドルームね」と、ジゼルさんはすたすたとらせん階段を上りはじめる。後に付いていくと、広々とした部屋にキングサイズのベッドがひとつ。
 「シーツは交換済み、替えはクロークの中よ」
 「……??」
 寝室の隣には大きなクロークがあって、服や靴や鞄がぎっしりとしまわれている。ジゼルさんは、服が掛かった一角を隅に寄せてスペースを作り出し、「ここ使ってね」と言う。

 ……って、ええー!?この家が「貸部屋」なんですか?
 驚いた。

 自分が生活している家を明け渡して貸してくれる、などということは全く想定していなかった。ひとに貸している間は、市内の友人宅に居候するのだそうだ。でも、いくらお金が必要だからといって、家具調度と中身がそのままで、見知らぬ外国人に家一軒丸ごと貸すってどうよ。バスルームには使いさしのシャンプーやら化粧品やらが置きっぱなし、オーブンや食器洗浄機も備えた大きな台所には鍋釜、調味料から各種食材まで。「どれも使っていいのよ」って……いいんですかジゼルさん。
 もっとも、書斎には仕事用のPCがあり、数日に一度はメールチェックなどでここに来る、ということなので、これは双方に信頼関係がないとできない部屋の借り方だ。回数を重ねるごとにどんどんハードルが上がっていく気がするB&B、おそるべし。
 だが幸いなことに、今回も当たりくじをひいたようで、家主さんは、サッカーだけを見に、ドイツくんだりまで来たあやしい日本人にも大変良くしてくれた。天気のいい日に庭に出てまったりとコーヒーを飲みながら一緒に過ごしたり、デュッセルドルフ市内観光につきあってくださったり。またしても、快適なドイツ滞在なのだった。

a0021929_2163486.jpg それにしても、と我に返る。ドイツでひとん家の冷蔵庫の残り物使って料理して食ってる自分って……

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# by terrarossa | 2010-10-18 02:28 | サッカー
2010年 10月 13日
2010年もまた、ドイツのサッカーを見に行く・その1
 またしてもドイツである。
 一体何回行ったら気が済むのか。
 いや、もうこうなったらとことんはまってやる。後悔などするものか。

 …という決意のもと、腹をくくって4年連続4回目のドイツ旅行を敢行。今回は単独行ということもあり、おのれの萌えと欲望の充足のみに終始してしまった。いい年こいて何をしておるのだ自分。
 てことで、前年よりも更にパワーアップして暑苦しくウザいミーハー旅行記になっていくと思われます…申し訳ありません。

◆さっそくICE車内で墓穴を掘る
 9月17日午後、フランクフルト空港に到着し、鉄道を使って滞在予定先のデュッセルドルフに向かった。金曜夕方のICEは大荷物を持参した人々でごったがえしていたが、運良くテーブル席が一つ空いたので、そこへ座ることができた。フランクフルトからデュッセルドルフまでは約1時間半。で、ひまつぶしのため折り紙を開始。すると、隣でノートパソコンを広げていたサラリーマン風の中年男性が、興味深げにこちらをじっとのぞき込んでくる。とりあえず、けっこうな雨が降っていたのが車窓から見えたので、「雨ですねえ」と声をかけてみた。窓の外はぶどう畑。彼は「今年は雨ばっかりで、ぶどうの作が悪いからワインは期待できないね」と言い、そこからペラペラ英語のドイツ人とうっすら英語の日本人とのあやしいコミュニケーションが始まったのだった。彼はマルクスと名乗り、「ドイツ、初めてかい?」と、お約束のような質問をしてきた。
 「いえ、4回目です」
 「……」
 マルクスさん一瞬沈黙。ドイツに4回も来ているくせに、ドイツ語が全くできず、英語もうっすらというヘタレ日本人に呆れたのだきっと。
 「ドイツではどこへ行くの?何を見るの?」
 「サッカーの試合を見に」
 「え、サッカー?」
 「4試合見る予定です」
 マルクスさんはなにかピンときたらしく、「ああそういえば今、ブンデスリーガにたくさん日本人いるよねえ」
 残念ながら、今回観戦予定の試合に日本人選手が所属しているチームは一つもないのだが、それはさておき、話を続けることにする。「ええ、今季からたくさんいますね。香川とか…」
 9月の時点で既にボルシア・ドルトムントで大活躍していて、俄然注目の的と報道されていた香川選手の名前をとりあえず真っ先に挙げてみた。が、意外にもマルクスさんの反応は鈍かった。「ああカガワね」と思いっきりスルー。あれれ?
 うん、きっと日本で騒いでいるほどではないのだろうな、まあ日本のマスコミが大袈裟に報道するのはよくあることだし、と思いつつ、「あと長谷部」と続けると、「ハセーベ!彼たしかヴォルフスブルクだったよね」と、香川選手よりは良い反応。長谷部選手はもうドイツで4シーズン目だから、けっこう知られているのだろう。とすると、ドイツに来たばかりなのに、怪我で出遅れている日本人選手のことなんて知らないかも。でも一応「それから内田」と、今季シャルケ04に新加入した内田選手の名前を挙げてみた。すると、なんとマルクスさんはぱーっと顔を輝かせて「ウチダ!うんウチダ」と声を弾ませて二度繰り返したのだった。ちなみに、ドイツの人は「Uchida」と表記する彼のことを、ドイツ語読みにそのままあてはめて「ウシダ」とか「ウヒダ」とか言ってて、正しい発音で呼んでないことが多いと聞いていたが、彼はきっぱり正しく「うちだ」と発音していた。
 「それからもう一人いたよね。えーと」マルクスさん、そう言ってからしばらくうーんと唸っていたので、「フライブルクの矢野ですね」と言うと、「ヤノー?知らないなあ……あ、ハオだ、ハオ!」
 ハオって、シャルケのハオ・ジュンミンだろうか。
 「もしかしてシャルケのハオ?彼は中国の選手です」
 「あそうそう、そうだったね!ハオは中国人」
 この時点で疑惑(?)は確信に変わった。そう、マルクスさんはシャルケのファンだったのだ!これで香川選手に対する反応があまりにも冷ややかだったことへの合点がいった。シャルカーのマルクスさんからすれば、宿敵ボルシア・ドルトムントで絶賛活躍中の日本人選手など、憎き存在でしかないのだ。関心が無いどころか、本当にドイツ国内でもその活躍が話題になっていて、それをふまえてあの反応だったのだ(香川選手すごいなあ)。
 よく見ると、テーブルに広げたパソコンのデスクトップがシャルケのユニフォームを着たラウール。さらにマルクスさんは、にこにこしながら、自分のi-Phoneをこちらへ向けた。画面には、シャルケ全選手の顔写真付きプロフィールが。どうやらマルクスさんは、うっすら英語の日本人が、ハオ・ジュンミンというフルネームと、彼が中国人で、シャルケの選手だと即答したことに気を良くしたらしい。「これがハオだね」とマルクスさんは選手の詳細データを開いて、次々と見せてくれる。「で、これがウチダ」。そこには、選手の顔写真と経歴、身長、体重などがリストアップされていた。マルクスさんは、内田選手の身長と体重のところを指さしながら「小さいよねえ、細いよねえ」と言った。地元シャルカーにはそこがいちばん印象的だったらしい(内田選手頑張れよう)。

 ということで、話題は一気にシャルケ一色に。
 「マガトは日本でもとても有名な監督です。ハードトレーニングで…」と言うと、マルクスさんは「今の時代にメディシンボール(トレーニング用の重いボール)なんて使うんだよ!」と笑った。時代遅れのトレーニングだってことを言いたかったのか。
 「フェルティンス・アレーナ(シャルケのホームスタジアム)には行ったことある?」
 「いいえまだ」
 「すばらしいところだよ!」とマルクスさんは言い、以下スタジアムの様子を延々と語り出した。残念ながらうっすら英語の日本人には半分も聞き取ることができなかったが、とにかくスタジアムのすばらしさを語っているのだろうということだけはよーく理解できた。特に芝生のメンテナンスがすごいということを強調していたので、「テレビでなら見たことがあります。美しいスタジアムですよね」と言ってみた。
 「日本のテレビで見たの?」
 「内田選手のスペシャル番組をやっていたので」
 そう答えると、マルクスさんはハハハと笑い、「実際行かなきゃ!一度行ってみてくれよ」と熱く勧めてきた。
 だが、言ったそばから彼は「今週末ドルトムントとの試合があるんだけど、チケットとるの難しくてねえ…」とため息をつく。 
 そう、熱狂的なファンを多数抱えるシャルケのホームゲームは、チケット入手が超難関。地元シャルカーでもなかなかとれないチケットを、外国人のいちげんさんがどう入手しろと。
 「で、シャルケはなんで勝てないんでしょう?」と訊いてみる。昨シーズン、リーグ2位という成績でCL出場も決めたシャルケは、新シーズン開始以降、リーグ戦でもCLでも全て黒星。勝利どころか引き分けすら無い厳しい状況にあった。
 「うーん、人をいっぱい入れ替えて、それがまだフィットしてないんだろうね」とマルクスさん。
 「ハイコ・ヴェスターマンもHSVに行っちゃいましたね。キャプテンだったのに…」
 「ああハイコ!とても残念だよ」マルクスさんは、心底残念そうに言った。
 あまり明るくない話題に若干トーンダウンしたところで、突然マルクスさんは気分転換するかのように「で、君はどこの試合を見るんだっけ?」と訊いてきた。うお、今更なにを。
 「…レバークーゼン対ニュルンベルクです」
 「それから?」
 「レバークーゼン対フランクフルト」
 「…あとは?」
 「シュツットガルト対レバークーゼン、もう一つはツバイテの試合で……」
 「……」
 正直に答えるほど墓穴を掘っているのは自覚していた。今の今までドメスティックなシャルケの話で盛り上がっていたのは一体なんだったのか。マルクスさんは苦笑しつつ問う。
 「君もしかして、レバークーゼンのファン?」
 「……ハイ」下を向いて答える。
 「あー!ほらちょうどバイアレナだ!」いきなりマルクスさんは窓の外を指す。
 「ええっ?」
 なんという恐ろしい(?)偶然か、列車はまさにレバークーゼンミッテ駅を通過し、車窓からは木立に紛れてレバークーゼンのホームスタジアム、バイアレナの姿が。マルクスさん爆笑。
 ということは、もうすぐデュッセルドルフだ。
 
 「いやー、すっごく楽しかったよ!」
 最後の最後で思いっきり墓穴を掘ってしまった日本人に、マルクスさんは優しかった。
 席を離れるところで「良い旅行を!」と声をかけてくださり、ホームに降りて列車の方を見ると、窓越しに、満面の笑顔で手を振ってくれた。
 
 なんというか、そうだ、フスバル万歳(……あれで良かったのだろうか)。 
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# by terrarossa | 2010-10-13 02:58 | サッカー