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2009年 06月 02日
路地裏は野生の王国
a0021929_0331562.jpg 2006年に製作された、ツァイ・ミンリャンの映画「黒眼圏」(邦題「黒い眼のオペラ」)は、森林火災で大気汚染が深刻な頃のマレーシアを舞台としたもので、5月のマレーシア旅行では、この映画のことを思い出しながら街を歩いた。映画のシーンに出てきたような、建築途中で放棄されたとおぼしきビルの廃墟はクアラルンプール市内でいくつか見られ、大きな水たまりができているところもあった。そのように開発途上でうち捨てられたところがある一方で、しかるべきところでは街の整備が進み、小ぎれいな一角が所々出現している。だが、まだ多くの場所は猥雑な熱気と喧噪に満ちあふれた東南アジアの街並みだった。
 とりわけ路地裏に足を踏み入れれば、もうそこは悪臭ただようカオス状態の別空間。破れてぼろぼろのゴミ袋がゴミ箱から溢れ、それが片づけられる気配もなく、さらに新たなゴミがうず高く積もっている。ゴミ収集システムが、街中くまなく機能しているわけではないらしい。
 それにしてもこんなに派手にぶちまけなくてもいいのになあと思いつつ歩いていくと、ゴミの山のそこかしこから、ザザザーッという、物が崩れるような音がさみだれ式に聞こえてくる。果たして薄暗闇の中に見えたのは、一斉に物陰へ移動する、尋常じゃない数の巨大ネズミの姿。要するに、やつらが無秩序に積まれたゴミの袋を食い破り、さらに収拾のつかない状態にした結果がこの惨状だったのだ。そいつらのでかさときたら、思わず後ずさりしたくなるほどのレベルであること間違いなし。気候と食べ物に恵まれ、丸々と肥え太り、毛並みはつやつや。対照的に巷のネコが一様にスリム体型だったのが不思議だった。やつらに体当たりされたら、吹っ飛ぶのはネコのほうだろう。

 そういえば、ロシアと国境を接する中国の田舎町、台湾の地方都市、香港と、場所は異なるが、いずれの街なかでも、ゴミ収集車が、ローカルな節回しの電子音メロディーを、鼓膜がどうにかなるくらいの大音量で流しながらとろとろ走るのを目撃したことがある。サブちゃんの熱唱演歌をフルボリュームで響かせながら山間地の集落を訪れる、移動販売車のノリである。で、家々からゴミ袋を持った人々がわらわらと出てきて、そこで順次ゴミが回収される場面にも出くわした。分別はどうだとか、そのゴミがどこへ運ばれてどう処理されるのかは別として、それらの地域では、とりあえず発生したゴミがその場に放置されず、決まったところで処分されるしくみができているのだ。
 
 ゴミ収集システムがもっと機能するようになれば、クアラルンプールも都市としてまた進化を遂げるのだろう。そうはいっても、メタボネズミが跋扈する路地裏の野生の王国は、当分、滅びそうにないような気もするが……
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by terrarossa | 2009-06-02 00:45 | 見聞録