2006年 11月 07日
西海岸系?
西海岸系。
 ……そんなおおざっぱな分け方があるかどうかはわからないが、ここ最近ヘビーローテーションしているのは、アメリカ西海岸出身バンドのフーバスタンクだ。すでに2001年のメジャーデビュー・アルバムから、新世代ラウドロックバンドとして話題となり、2003年に発売された「The Reason」では、シングルカットされたタイトルチューンのバラードだけでなく、アルバムも大ヒットしている。
 最新アルバム「Every Man for Himself」(日本盤タイトルは「欲望」)は特に素敵だ。心踊るサウンド、五感に訴えかけてくるビート。もう、冒頭の現役米軍軍曹の訓示に続く「Born to Lead」から、一挙に心奪われてしまった。いろんな人が評価しているとおり、以前のアルバムから比べると、ひたむきで激しい路線から、より内省的な方向にシフトしている。もとより単にラウドロックと分類するのをためらうほどナイーブな側面を持つ彼らの音楽だが、なんというか、同じ「熱さ」でも、ガンガン燃えさかる「炎」から、湿度を伴った「蒸気」になったような質の変化を感じる。そのぶん、まっすぐで衒いのないボーカルの声に、せつなく控えめなエロティシズムが加わって、さらに魅力的になったと思う。
 初期アルバムからのファンからすれば、だいぶおとなしくなっちゃってかなりもどかしいところもあるんだろうけど、最新アルバムはその分じっくり聴けて、心の奥底にぐっとくる。彼らは世代的にもキャリア的にもリンキン・パークと重なる比較的若いバンドで、これからどこへ向かっていくのかはまだわからないが、おおいに注目しているところだ。

 そもそも好きだったリンキン・パーク、サーティー・セカンズ・トゥー・マーズ(30STM)、レッド・ホット・チリ・ペッパーズもやはりアメリカ西海岸出身のバンドだ。さまざまなアーティストが活躍しているアメリカ西海岸地域は、分類したらきりがないくらいいろんなジャンルの音楽はあるし、同じカテゴリにあっても、もちろんそれぞれの音楽性は異なっているけれど(フーバスタンクは、リンキン・パークや30STMとくらべると、より直裁でアッパーな印象がある)、基本的な路線としてはやっぱ近いものがあるんだろうな……ああ、そういえば台湾の黄立行(Stanley Hwang)もロサンゼルス育ちで、ここの音楽の影響をもろに受けているのだった。
 少なくとも、一個人を惹きつけるなにか共通項のようなものは、はっきりとあるような気がする。地縁と音楽性が必ずしも一致するわけではないにしても。
 
 ところで、「アメリカ西海岸」というと、晴天の日が多く、からっとした気象条件から、モトリー・クルーとかガンズ・アンド・ローゼス、ヴァン・ヘイレンといった明快なハードロックをつい連想してしまう。だが、それらのバンドが活躍した1980年代よりももっと世の中の事情が複雑になってしまった21世紀においては、いくら天気がいいからといって単純明快享楽的といくわけにもいかなくなったのか、深く思い悩み、時には捨て鉢になり、苦しげにのたうつような音楽が際だって多くなった。
 そんな30STMのセカンド・アルバム「A Beautiful Lie」はエロスと退廃のお耽美なテイストをたっぷりと含みつつも、いったいなににせき立てられてるんだというようなせっぱ詰まったサウンドが、アルバム全編を駆け抜けている。歌詞の刹那的な内容も相まって、いいトシの大人が、モラトリアムをさまよう少年みたいに不安定で鬱屈した心情を思い切りぶちまけているように聞こえてしまう……いや、モラトリアムとかそういうことじゃないなあ。ついに降り立った火星の、あまりに殺伐とした厳しい現実に衝撃を受けて打ちのめされる、地球人の心の叫びのようだ。それにくらべて彼らのファーストアルバムは、なんだかわかんないがやたら壮大で、その分現実感がなかった。それは、まだ火星が未知の惑星で、ばくぜんとあこがれる宇宙のイメージだったからか(←違います)。
 不思議なことに、ここで唐突に思い浮かんだ日本のバンドが、それっぽい感じのLUNA SEAとか黒夢とかラルクではなく、デカダンスとか重厚さとかそういう位置とはある意味対極のところにいるであろう、バンプ・オブ・チキンだった。
 あまりに生硬な、若さゆえの焦燥、理由なき苛立ち、ざらついた疾走感。それでも未来はあかるく希望に満ちている。彼らの、せわしく前のめりで、極端に湿度の低い歌世界に触れたとき、ひどくエモーショナルで、うっかり衝突しちゃったらダメージのでかそうな30STMを思い出してしまったのはなんでだろう?
 たぶんそれは、国と世代は違えど、振り返らず戻らず、ひたすら生き急いでる感じがほんの少しだけ似通っていたからなのかなあと、つらつら思っているところである。

と書いているうちに、いつの間にか西海岸がすっかり遠くなってしまった気が……
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by terrarossa | 2006-11-07 21:41 | 音楽


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