2004年 06月 13日
台北駅、2004年5月4日、AM6:40。
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 台北駅で、偶然ある人に会った。

 3泊4日の短い台湾旅行だった。
 一人旅だったので特にスケジュールも立てず、気の向くまま映画を見て、本屋に行って帰ってきた。

 台湾人のその人は、現在兵役に就いている。
 彼はものをつくる仕事をしており、その作品を好きになったことがきっかけで知り合った。とはいっても、個人的に連絡を取り合うような親しい間柄ではない。友人と呼べるような対等な立場ではない。まして兵役中のこと、その所在などわかるはずもなかった。

 帰国の朝、寝坊して地下鉄を一本乗り過ごし、台北駅到着。空港行きバスターミナルは、駅地下に延々と続くショッピングモールの向こうだった。
 シャッターが下りて静まりかえった地下街を、ただひたすら急ぎ足で歩いた。向こうから人が来ることにも気付かないほど焦っていた。反対方向から誰かが歩いて来る、と気付いたのは、すれ違った瞬間のことだった。反射的に振り向いた。いつもなら、誰かとすれ違うたびにいちいちそんなことはしないが、不思議なことにその時は、絶妙なタイミングで、お互いがお互いの方を同時に見たのだ。で、ふたりして「なんでここにいるの?」
 この日は特別に、軍の行事があるとかで、駅に集合していたという。時間の合間を見て地下へ買い物しに下りてきたところだったらしい。お互い急いでいたので、5分間ほど立ち話をしただけで別れた。偶然というにしては、あまりにも凄すぎるタイミングで、いまだに信じられない。話しているときは冷静だったつもりだが、独りになって急に怖くなり、これから自分が乗る飛行機が落ちるんじゃないかと本気で心配してしまった。だから、無事成田に到着したときは、心底ホッとしたのだった。

 映画「ブエノスアイレス」(監督:ウォン・カーウァイ)のラストシーンを思い出した。
 アルゼンチンで恋人とも友人とも訣別した主人公・ファイ(トニー・レオン)は、独り香港に戻る途上、台湾に立ち寄り、友人の家が営む屋台をひそかに訪ねる。そこで彼は、「世界の果て」にたどりついた友人の写真を見つける。だからといって再び友人に会える確証は全くない。恋人との関係は二度と元に戻らない。そんな状況であるにもかかわらず、彼は「会いたいと思えば、いつでも、どこでも会うことができる」と確信するのだ。何も確かなものはないというのに、不思議とあかるい、なにかが浄化されるようなエンディングだった。

 実際に会うことが不可能でも、自分の記憶の中や、誰かの思い出の中で「会う」ことはいくらでもできるのだ。
 個人的に色々あった時期にこの映画と出会って、随分と救われる思いをした。

 あれから6年が経った。
 「念ずれば思いは叶う」ということも、もしかしたら本当にあるのかもしれない。
 先日の、信じがたいような「5分間の再会」があってから、少しだけそう思うようになった。
 歳ばかりとって、相変わらずろくでもない毎日を過ごしていることに変わりはないけれど。
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by terrarossa | 2004-06-13 06:50 | 見聞録


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