2005年 07月 16日
棘とか粉とか毛とか
 現在、一般に出回っているキュウリは、表面に光沢のあるものがほとんどである。実は本来、キュウリの果実は白い粉で覆われていて、つやがないものだと知る人は、今はどのくらいいるのだろうか。
 
 キュウリは、根から病気が入らないよう、病気に強いカボチャに接ぎ木して栽培していることが多い。つまり、地下部(根)はカボチャで、地上部はキュウリという訳。
 接ぎ木に使うカボチャは、もちろん台木専用の品種なのだが、今から25年ほど前に、接ぎ木するとキュウリが白い粉を吹かず、表面がぴかぴかになるカボチャの品種があることがわかった。
 キュウリの白い粉は、根が土壌中のケイ酸カルシウムを吸収することによって発生する。ところが、このカボチャは、ケイ酸カルシウムをほとんど吸収しない性質を持っており、キュウリの台木として用いると、キュウリ果実の表面に粉は発生しない。
 このキュウリは、「ブルームレスキュウリ」と呼ばれ、見た目が美しく、商品価値が高いということで、あっという間に普及して、今に至っている。
 おかげで今は、キュウリの果実はつやつや、というイメージが定着してしまったようである。そればかりか、たまに見かける本来のキュウリに対して、その白い粉を、付着した農薬だと誤解する人までいる始末(ブドウや柿も白い粉を吹くが、それすらも農薬と勘違いされることがあるらしい。このまちがった過剰反応、何とかならないもんだろうか!)。全くもって、トホホな事態だ。
 ブルームレスキュウリは、確かに見栄えはいいのだが、それ以外に、あまりいいことはない。まず食味。皮だけが硬くて果肉は軟らかくなり、食感が良くない。この点については、好き嫌いもあるだろうから断定はできないが、漬け物には向かないということで、漬物業界にはまったく人気がないそうだ。
 栽培する側にとっての問題は、キュウリの葉や茎をおかす病気、うどんこ病にかかりやすくなってしまうという点である。うどんこ病菌は、地上から植物体に侵入するが、植物体を保護する機能をもつケイ酸カルシウムは、この病原菌の感染を物理的に防ぐ効果があるらしい。ケイ酸カルシウムを体内に取り込まないブルームレスキュウリは、いわば裸のまま病原菌の胞子がうようよいる所にさらされているようなものだ。
 幸いと言うべきか、最近は、本来の「粉あり」キュウリも見直されてきて、ふたたびぼちぼち市場に出回っているようである。個人的には、だからブルームレスキュウリは駄目だ、ということではなく、消費者がどちらでも自由に選択できるような環境になればいいなと思っている。ごく最近の動きとしては、ブルームレス用の台木に接ぎ木しても、うどんこ病に強いキュウリの品種も登場しているから、これからまた状況は変わっていくのかもしれない。
 
 植物には、外敵や、もしくは生育に都合の良くない環境から物理的に身を守るための機能がそなわっている。バラやサボテンの鋭いとげや、栗のイガなんかがわかりやすい例だろうか。
そこまで大きくて具体的なものならば、これはその植物体全体を食べようとする者(おもに動物)への対抗策になるだろうが、実は、「キュウリの粉」と「うどんこ病」というようなミクロの世界においても、激しい攻防戦が繰り広げられているのだ。
 
蛇足ながら。
a0021929_18423350.jpg若いトマトも粉を吹く。ストロボ撮影してみると、あやしくも美しいきらめきの世界が。











a0021929_18352733.jpg品種によっては、激しく毛深いものもある。これは中玉トマト。ちなみに食味は極上。









a0021929_183666.jpg拡大図。
こすれたり洗ったりすると脱落してしまうので、新鮮でないとわからないかもしれない。
[PR]
by terrarossa | 2005-07-16 18:48 | いきもの | Comments(0)


<< アストル・ピアソラ ~格闘技系...      「の」はオシャレな流行文字なのか >>