2005年 05月 14日
ミクスチャー・ロックの「公園」をさまよう
 ここんところしばらく、リンキン・パークのCDばかり聴いている。
 高校三年までクラシックにしか興味を持たず、ふとしたことで洋楽にはまり、大学時代は洋楽オンリーという、節目ごとにスイッチが切り替わるような音楽歴(もちろん聴く方)をたどった後は、手当たり次第のごっちゃごちゃ、になってしまった。およそ考えられないような取り合わせ、たとえばグレゴリオ聖歌と、アストル・ピアソラと、エアロスミスと、これまた現在ヘビーローテーション中のQuarashi(アイスランド出身のヒップホップグループ)が、不思議なことに自分の中では無理なく共存している。まさにカオスの如しなのだが、どれもみんな「好き」なのだ。

 ということで、リンキン・パーク。
 バンドを支える重低音はハードロックそのものだ。そこにラップやスクラッチが乗っかっている。このありそうでなかった新鮮な組み合わせをどう形容したらいいんだろう?
 ちょっとしたとまどいが、やがてぞくぞくするようなときめきに変わるのにはさほど時間はかからなかった。ハードロック全盛の80年代に洋楽漬けだったこともあって、リンキン・パークの、全く異なるのにどこか懐かしい、腹にずっしりくるサウンドはまさにツボだった。その一方で、90年代後半になって台頭し始めたファンクやヒップホップにも強く惹かれていたから、その二つの「好み」の両方を満たすバンドなんてあった日には、もう一も二もなかった。
 そのがっちりと安定したビート、頑丈な「屋台骨」を構成するのが、ギターのブラッド・デルソン、ベースのフェニックス、ドラムのロブ・ポードン、そして往年のハードロックバンドには存在しなかった「DJ」、ジョセフ・ハーン(りりしい顔立ちの韓国系アメリカ人、ジョセフ・ハーンは、デビュー時より体重がかなり増加したのか、今や秋葉系オタクの青年みたいなビジュアルなんである。や、もともと彼自身アニメもフィギュアも大好きだそうだし、そのものなんだけど。でも、アメリカ人に秋葉系もへったくれもないし、それに、超人気バンドのサウンドの要が秋葉系だなんて、非常に「萌え」ました。アニキかっこいいです)。
 「アメリカにおけるロックバンドのフロントマンで、初めて成功した日系人」と言われている、マイク・シノダのラップはすっきり男前でクール。はじめて聴いたとき、本人の姿も知らず、歌詞の中身も理解していないうちから、非常に知的で聡明な印象を受けた。そこらへんにいそうでいない、インテリジェンスただようMC、これもツボ。そして彼、マイク・シノダがリンキン・パークのサウンドイメージの源である。彼と、DJ、ジョセフ・ハーンの持つオタクな職人気質こそが、アートなサイバーパンクとかSFアニメのにおいが香ばしくただよう、隅々まで計算し尽くした緻密な音を作り上げているのだ。
 チェスター・ベニントンのボーカルは、直感的、有機的な印象がある。彼は、リンキン・パークの、ある種理論的で、隙がない印象のサウンドに風穴をあける重要な存在だと思う。はじめは線が細くて頼りない声だと思って聴いていたら、いきなりすべてを絞り出すように絶叫したので驚愕した。このひとは昔、つらいことが色々あったんじゃなかろうか。こんな歌い方をしていたらそのうち喉がだめになるんじゃないかと、個人的にはハラハラしている。
 ナイーブで腺病質な、時としてぶち切れて暴走するチェスターのボーカルと、クールなマイク・シノダのラップ。全くベクトルの違うツインボーカルが絶妙にからんでいることが、このバンドの最大の特徴であり、魅力なのだ。 
 そしてこのバンドの曲は、すくなくともアルバム収録されたものは、すべてマイナーコード、「短調」である。ここにもチェスターがボーカルである、ということが大きく関わっているような気がする。叙情的でメロウな「泣き」のハード・サウンドなんて、古き良き時代のハードロックバンドの王道ではないか。それでいて湿っぽく重たくならないあたりは、やっぱりイマドキの歌だ。とにかく、自分をはじめとした、とうの立ったトシヨリのハートわしづかみである。そこにキレの良いスクラッチとラップを乗っけて、若者のハートもがっちりつかんどくなんて、やるなあ。
 ちなみに、ファースト・アルバムの曲には、ヒップホップ業界ではお約束のように出てくる教育上よろしくない単語が、全く使われていないそうだ。それでいてじゅうぶんに攻撃的で、ひりひりするような歌を作り上げているというのがすごい。そういうところまできっちり見極めてやっている感じがするから、(不適切な表現かもしれないが)このひとたちの偏差値はやっぱり高いのだと思う。
 また、アートスクール出身のシノダとハーンがいることから、バンドのビジュアルデザインを彼ら自身が手がけているというのもこのバンドの特徴だ。メンバーみずからジャケットのデザイン、ミュージックビデオの製作まで行う超メジャー・バンドというのは珍しい。これも彼らの強みだろう。
 どうもしばらくリンキン・パーク(公園)からは抜け出せそうにない。当分「公園内」の混沌をさまようことになるだろう。まだ若い彼らが、これからどのような音楽の世界を展開してくれるのか、とても楽しみだ。
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by terrarossa | 2005-05-14 11:44 | 音楽


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