2005年 03月 03日
レクイエム・フォー・ドリーム(2000、アメリカ)
 出演者たちの心と体に尋常でないプレッシャーを強いたであろう、ジェットコースター恐怖映画。
 ヤクの売人で、自らもドラッグ漬けになるダメダメ息子を演じたジャレッド・レトの鬼気迫るやつれっぷりもアッパレだったが、それ以上に、ダイエットがきっかけで覚醒剤にはまり、精神が崩壊してゆく老いた母親を演じたエレン・バースティンがとにかく凄い。
監督は、デビュー作「π(パイ)」で一躍有名となったというダーレン・アロノフスキー。が、「π」は未見だし、原作小説「夢へのレクイエム」も読んでないので、以下は、この映画だけを見ての感想となることをお断りしておく。

 主役の4人が全員ヤク中で、従って幸せな結末などあろうはずもなく、救いは全くない。おまけに、グロテスクな描写で大袈裟にあおっているところもあるので、人によっては生理的に駄目だったりするかもしれない。にもかかわらず、個人的にはそれほど「くる」ものはなかった。なにせ、ガンガン攻め込んで行くが如き目まぐるしいテンポとカット割りは、なにかをすっこーんと通り抜けちゃって、コミカルですらある。そういう、どっか突き放したような描写に、非常にクールでドライな印象を受けたので、麻薬の害悪をリアルに、容赦なく描いた作品であることに異論はないものの、皮膚的な恐ろしさを感じるまでには至らなかったのだ。うーん、役者たちは半端でない熱演を繰り広げているんだがなあ。
 映像自体は斬新で(や、一歩足を踏み外すと陳腐なホラー映画になりかねない、とも言えるか。くわばらくわばら)、低予算のインディーズ映画よろしく、まず作り手が楽しんでいることが感じられる。テレビ、甘いお菓子、コーヒー、そして「ダイエット」という行為……中毒は麻薬だけでないのだ、と言う主張もきちんと伝わってくる。クスリでイっちゃったら、世の中がこんな見え方をするのであろう、とリアルに思わせてしまう世界の組み立て方も巧みだ。後半、病院のシーンがあるんだが、「いくらなんでも今の病院でこんなことはしねえだろ!」と突っ込みを入れたくなる場面が出てくる。長年テレビドラマ「ER」にはまっている身としては、黙っちゃおれないような嘘臭い描写だ。しかし、ふと、「あ、これもドラッグでおかしくなった彼らの主観的な視点からだと、こう見えるってだけなのか」と思い至り、納得。見ていたテレビと自分がごっちゃになって乱痴気騒ぎになったり、口がぱっかり裂けた人喰い冷蔵庫に食われちゃったりしている世界だもんな。
 
 ところで、ジャレッド・レトという俳優を初めて知った時から、どこかで見たことのある顔だなあ……とずっと気になっていたのだが、この映画の、どっか詰めの甘いチンピラ風のジャレッドを見て、彼が、漫画家・多田由美氏の描くキャラクターにそっくりであることに気付いた。ぱっちり丸くて大きな瞳に少し上向きの鼻、寂しげな口元は、確実に少女漫画入ってる。むろん彼女はジャレッドをモデルにキャラクターを描いている訳ではないはずなので、驚きと感動もひとしおだった。デジャヴの正体はこれだったんだ。二次元の世界、侮りがたし。ほんと、びっくりするくらい似てるよ。すげえ。
[PR]
by terrarossa | 2005-03-03 23:12 | 映画 | Comments(4)
Commented by サンダー at 2005-03-14 00:10 x
ジャレッド・レト、「風の吹く音を聞く鹿のように魅力的だ」と、だいおーに言われちゃったお方ですね、ふふふ。鹿のように魅力的ってどーいうの??  
Commented by terrarossa at 2005-03-14 04:56
 いやいや、映画「アレキサンダー」の中でそう言ってたのはヘファイスティオン(ジャレッド・レト)の方です。アレキサンダーの首をかしげる癖について、彼が「風の~」と言うんですね。アレキサンダーに、「首をかしげる癖」があったことについては、「プルターク英雄伝」などの記録に残っているそうですが、その史実(あくまでも後世の記録によりますが)を、ここではあまりに純粋で、気恥ずかしくなるような愛の場面に使っていたのが上手いというか何というか。
 定かじゃないんですが、「風の音~」は、映画のオリジナル台詞じゃなくて、こういう表現がもともとあり(過去に誰かが誰かに言った言葉として残っている)、それを引用したものだと聞きました。もしそれが本当なら、印象的な台詞だっただけに、オリジナルの出所(?)が大変気になるところです。
Commented by 潮来ラブ at 2005-03-23 23:13 x
ちと形容は異なりますが、いにしえの「アナザー・カントリー」中で、ベネットがハーコートを遠くから望遠鏡で見つめながら、ハーコートが建物から出てきて外に立ち止まる様を形容して、ため息まじりに「彼が風の匂いを嗅ぐ……」ってなことを言います。そばで聞いていたクールな親友、今やブリジットの彼氏マーク・ダーシーとなったコリン・ファース演じるジャドは、「鹿だね!」と茶々を入れます。欧米において「風と鹿」は切っても切れないものなのかも。そういやあ、ハーコートのケアリー・エルヴェスは「ソウ」で主演だったっけか。当然、殺されるのか? すっかりおっさんとの噂だが、見てやらにゃあなりませんかね。

「フォーン・ブース」、何回も探しましたが、私の目が節穴なのか、カメオ出演のレトちん、見つかりません。群衆とか目深く帽子(ヘルメット?)かぶった警官だったら、絶対わからないと思うよ(涙)。
Commented by terrarossa at 2005-03-29 01:44
 潮来さん、お久しぶりです。風と鹿ですかー。なんとなくロマンチックな形容として想像はできても、どうもピンと来ません。鹿の存在があちらより身近ではないからなのかなあ。日本じゃ風というと柳あたりが(←なんか違う)。
 「ソウ」、そうだったんですか(駄洒落ではない)。ケアリー・エルヴィスはB級映画専門俳優になってしまったのだと風の噂で聞いていましたが。
 ジャレッド・レトは、最後までまともでいる映画出演作がほとんどありません。好んで酷い目にあったり、死んだりする役ばかり選んでいるとしか思えず、彼が出演していると、つい「この映画ではどんな酷い目に……」とアブナイ期待に胸躍ってしまうようになっちまった。やべー。


<< 台湾のアッパレなラッパーたち      2004年に見た映画 >>