2004年 10月 22日
うしのかおり
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 就職して3年目の夏に、初めて海外旅行へ行った。行き先はベルギーとオランダ。ベルギーもオランダも花屋だらけで、花が至る所にあふれかえっていた。小さな駅の売店にも花専門スペースがあり、駅を出るとまた花屋のスタンド。ごっついオッサンが、新聞紙にくるんだでかい花束をひょいと肩にかけて歩いていたりする。ひとの家を訪問する際、日本ならば菓子折を持参するところ、かの国では花を持っていくらしい。ということで、種類ごとのばら売りだけでなく、花束にして販売しているものも多かった。とにもかくにも百花繚乱とはこのことか。さすが「花の国」であることよ。
 当然、各家庭での庭も、えらく気合いが入っていた。ベランダはプランターやハンギングバスケットに植えられた花々で飾られ、洗濯物は見あたらない(ベルギー在住の知人に聞いたところ、こちらでは洗濯物を人目につくところへ干すということに関して、何らかの規制が設けられているとのことだった。アジアじゃベランダといえば洗濯物、香港で目撃した満艦飾は、そりゃあ壮観な眺めだった、ということを思うと、ずいぶん状況が違う)。郊外の住宅の庭は、目にも眩しい緑の芝生を囲むように様々な季節の草花が美しく配置してあり、雑草の一本も生えていない。毎日ピンセットで雑草のひこばえを抜いてるのかあ?と思ってしまうくらいの完璧さだった。絵のような風景とはこのことか。
 花で飾る・庭を手入れする、という人々の関心が非常に高いから、このような状況にある訳なのだが、環境条件に助けられている点もあると思う。同等のレベルを日本(特に関東以西)で維持するとなると、更に数倍の努力と工夫が必要となるに違いない。
 行ってわかったことだが、まず、そこいらで見かける虫、雑草の種類が非常に少ない。夏季も降雨が少なく、湿度が低くて涼しいという気象条件によるものだろう。蒸し暑いアジアの夏とは明らかに違う。当然、植物にかかる病気も害虫も少ないと思われる。そういえば向こうの住宅に網戸などというものはなかった。入ってくる虫がいなければ、そんな余計なものは必要ない(知人の子供は「蚊に刺されたことがない」と言っていた)。どうりで裸になって森林浴だってできる訳だ。

 そして、行ってわかった極めつけの事実、それは「うしのかおり」。花の国であると同時に畜産の国であるオランダでは、あふれかえっているのは花だけでなく、牛や羊もまた然り、であった。そう、絵のように美しい庭の風景に充ち満ちているのは牛の香り、牛舎のにおい。イメージぶち壊しである。
 現物無しに「におい」の情報をリアルタイムに伝達する手段は、幸いなことに(?)まだないようだ。いや、日夜技術革新は進んでいるのだから、将来「におい」の情報もダイレクトに嗅覚へ伝わるようになるのかもしれない。となれば、日本に居ながら、絵のように美しい庭々と牛の香りでリアル・オランダを満喫することができるのかも……満喫したくはないが。
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by terrarossa | 2004-10-22 04:56 | 見聞録 | Comments(0)


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