2010年 11月 23日
腹に一物(物理的に)
 サッカー関連でこちらのブログをにいらしてくださった皆様、すみません。この類の話題もまた、一貫性まるで無しな当ブログのもう一つの顔なんです実は……

 現在の職務上、野菜類を食害するガの幼虫などを捕獲し、種類を特定するために、成虫になるまで職場の机上で飼育して確認するということを時々行っている。
 といっても、試験研究業務ではないので、とりあえず成虫まで育てて種類が確認できればそれでOK。たいがい飼育はシャーレだったりカップ味噌汁の空容器だったり、その時そこにあるものを使う。ガは、幼虫の内は脱皮するたびに色や模様が変わるだけでなく、個体変異が大きい種類もあるので、成虫にして確認したほうがわかりやすい。
 いわゆる農業害虫として問題になっているガの多くは、幼虫の時はたいそう派手派手しい色柄のもいるが、アースカラー系かグリーン系の保護色のヤツの方が多いし、成虫はおしなべて地味ーな色合いのものばかりで、ビジュアル的にはあんまり楽しくない。それでも、幼虫→蛹→成虫とかなりドラマチックな形態の変化があるので、無事に羽化して成虫になれば、そこそこの感動はある。なにより種類特定という点では、とにかく成虫になってもらわないと、飼育してきた意味がない。

a0021929_1618964.jpgヨモギエダシャクの幼虫。枝に擬態して、ぴっしりまっすぐポーズをとっている。

 ところが、野外から捕獲してきたガの幼虫は、かなりの高確率で「お客さん」を飼っている。いわゆる、寄生バチや寄生バエの類である。彼らは、宿主(ガ)の命に別状のないところから食い進み、宿主はその間、普通にエサを食べつつそこそこ成長する。しかし、さあもうすぐ蛹だ、とか、蛹になったからあとは羽化、というところで、成長したハエまたはハチの幼虫は、宿主の体を食い破って脱出してくるのだ。かくして、ある日突然、崩壊した死骸の傍らで、俵型の茶色くてでかいハエの蛹や、スリムな黄色や白のハチの繭がごろごろ転がっているというエグい光景(画像掲載はあえて自粛いたします)を目にするのである。
 種類を特定しようとして飼育してる立場ならばありがたくないことだが、こういった寄生バエや寄生バチがいるからこそ、適正な個体数の調整が行われ、自然界はうまいことバランスを保つことができているとも言える。時には大発生して、農業上しばしば問題となるガの天敵として、彼らは重要な存在なのだ。

a0021929_16184273.jpg ホウネンタワラチビアメバチの繭(蛹)と成虫。画像の茶色のマス目は1㎝角。超スリムな小さいハチで、野外でそれと意識して見つけようとするのは大変困難である。でも、白黒まだらの繭は、注意していれば割とよく見かけることができる。「ホウネンタワラ」は「豊年俵」の意で、この俵型の繭がたくさんある畑は(農作物を加害するガの個体数を減らしているということになるので)豊作の兆しである、というところからきている。


a0021929_1618594.jpg ハスモンヨトウの蛹を食い破って出てきたヤドリバエの一種。ヤドリバエの類は、似た形態のものが多くて、素人にその同定は難しい。よく見ると細部はかなり違っているが、ぱっと見、衛生害虫としておなじみのイエバエととそっくりで、見た目でかなり割を食っているんではなかろうか。このビジュアルでは、間違いなく蠅叩きで追いかけ回されたりする対象扱いだろうな。農業上は有用な天敵なんだけどなあ。

 なお、このヤドリバエ君は10月27日に羽化したのだが、現在のところ、ティッシュに染みこませた砂糖水を摂取しつつ元気に生きながらえている。エサを交換する時は、ハエが脱走しないよう、飼育容器ごと10分ほど冷蔵庫に入れ、ハエの体温を下げて動きを鈍くしてから入れ替え作業を行う。手がかからなくて飼いやすいのでおすすめ!……って誰得情報なんだコレ。
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by terrarossa | 2010-11-23 16:26 | いきもの


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