2010年 10月 13日
2010年もまた、ドイツのサッカーを見に行く・その1
 またしてもドイツである。
 一体何回行ったら気が済むのか。
 いや、もうこうなったらとことんはまってやる。後悔などするものか。

 …という決意のもと、腹をくくって4年連続4回目のドイツ旅行を敢行。今回は単独行ということもあり、おのれの萌えと欲望の充足のみに終始してしまった。いい年こいて何をしておるのだ自分。
 てことで、前年よりも更にパワーアップして暑苦しくウザいミーハー旅行記になっていくと思われます…申し訳ありません。

◆さっそくICE車内で墓穴を掘る
 9月17日午後、フランクフルト空港に到着し、鉄道を使って滞在予定先のデュッセルドルフに向かった。金曜夕方のICEは大荷物を持参した人々でごったがえしていたが、運良くテーブル席が一つ空いたので、そこへ座ることができた。フランクフルトからデュッセルドルフまでは約1時間半。で、ひまつぶしのため折り紙を開始。すると、隣でノートパソコンを広げていたサラリーマン風の中年男性が、興味深げにこちらをじっとのぞき込んでくる。とりあえず、けっこうな雨が降っていたのが車窓から見えたので、「雨ですねえ」と声をかけてみた。窓の外はぶどう畑。彼は「今年は雨ばっかりで、ぶどうの作が悪いからワインは期待できないね」と言い、そこからペラペラ英語のドイツ人とうっすら英語の日本人とのあやしいコミュニケーションが始まったのだった。彼はマルクスと名乗り、「ドイツ、初めてかい?」と、お約束のような質問をしてきた。
 「いえ、4回目です」
 「……」
 マルクスさん一瞬沈黙。ドイツに4回も来ているくせに、ドイツ語が全くできず、英語もうっすらというヘタレ日本人に呆れたのだきっと。
 「ドイツではどこへ行くの?何を見るの?」
 「サッカーの試合を見に」
 「え、サッカー?」
 「4試合見る予定です」
 マルクスさんはなにかピンときたらしく、「ああそういえば今、ブンデスリーガにたくさん日本人いるよねえ」
 残念ながら、今回観戦予定の試合に日本人選手が所属しているチームは一つもないのだが、それはさておき、話を続けることにする。「ええ、今季からたくさんいますね。香川とか…」
 9月の時点で既にボルシア・ドルトムントで大活躍していて、俄然注目の的と報道されていた香川選手の名前をとりあえず真っ先に挙げてみた。が、意外にもマルクスさんの反応は鈍かった。「ああカガワね」と思いっきりスルー。あれれ?
 うん、きっと日本で騒いでいるほどではないのだろうな、まあ日本のマスコミが大袈裟に報道するのはよくあることだし、と思いつつ、「あと長谷部」と続けると、「ハセーベ!彼たしかヴォルフスブルクだったよね」と、香川選手よりは良い反応。長谷部選手はもうドイツで4シーズン目だから、けっこう知られているのだろう。とすると、ドイツに来たばかりなのに、怪我で出遅れている日本人選手のことなんて知らないかも。でも一応「それから内田」と、今季シャルケ04に新加入した内田選手の名前を挙げてみた。すると、なんとマルクスさんはぱーっと顔を輝かせて「ウチダ!うんウチダ」と声を弾ませて二度繰り返したのだった。ちなみに、ドイツの人は「Uchida」と表記する彼のことを、ドイツ語読みにそのままあてはめて「ウシダ」とか「ウヒダ」とか言ってて、正しい発音で呼んでないことが多いと聞いていたが、彼はきっぱり正しく「うちだ」と発音していた。
 「それからもう一人いたよね。えーと」マルクスさん、そう言ってからしばらくうーんと唸っていたので、「フライブルクの矢野ですね」と言うと、「ヤノー?知らないなあ……あ、ハオだ、ハオ!」
 ハオって、シャルケのハオ・ジュンミンだろうか。
 「もしかしてシャルケのハオ?彼は中国の選手です」
 「あそうそう、そうだったね!ハオは中国人」
 この時点で疑惑(?)は確信に変わった。そう、マルクスさんはシャルケのファンだったのだ!これで香川選手に対する反応があまりにも冷ややかだったことへの合点がいった。シャルカーのマルクスさんからすれば、宿敵ボルシア・ドルトムントで絶賛活躍中の日本人選手など、憎き存在でしかないのだ。関心が無いどころか、本当にドイツ国内でもその活躍が話題になっていて、それをふまえてあの反応だったのだ(香川選手すごいなあ)。
 よく見ると、テーブルに広げたパソコンのデスクトップがシャルケのユニフォームを着たラウール。さらにマルクスさんは、にこにこしながら、自分のi-Phoneをこちらへ向けた。画面には、シャルケ全選手の顔写真付きプロフィールが。どうやらマルクスさんは、うっすら英語の日本人が、ハオ・ジュンミンというフルネームと、彼が中国人で、シャルケの選手だと即答したことに気を良くしたらしい。「これがハオだね」とマルクスさんは選手の詳細データを開いて、次々と見せてくれる。「で、これがウチダ」。そこには、選手の顔写真と経歴、身長、体重などがリストアップされていた。マルクスさんは、内田選手の身長と体重のところを指さしながら「小さいよねえ、細いよねえ」と言った。地元シャルカーにはそこがいちばん印象的だったらしい(内田選手頑張れよう)。

 ということで、話題は一気にシャルケ一色に。
 「マガトは日本でもとても有名な監督です。ハードトレーニングで…」と言うと、マルクスさんは「今の時代にメディシンボール(トレーニング用の重いボール)なんて使うんだよ!」と笑った。時代遅れのトレーニングだってことを言いたかったのか。
 「フェルティンス・アレーナ(シャルケのホームスタジアム)には行ったことある?」
 「いいえまだ」
 「すばらしいところだよ!」とマルクスさんは言い、以下スタジアムの様子を延々と語り出した。残念ながらうっすら英語の日本人には半分も聞き取ることができなかったが、とにかくスタジアムのすばらしさを語っているのだろうということだけはよーく理解できた。特に芝生のメンテナンスがすごいということを強調していたので、「テレビでなら見たことがあります。美しいスタジアムですよね」と言ってみた。
 「日本のテレビで見たの?」
 「内田選手のスペシャル番組をやっていたので」
 そう答えると、マルクスさんはハハハと笑い、「実際行かなきゃ!一度行ってみてくれよ」と熱く勧めてきた。
 だが、言ったそばから彼は「今週末ドルトムントとの試合があるんだけど、チケットとるの難しくてねえ…」とため息をつく。 
 そう、熱狂的なファンを多数抱えるシャルケのホームゲームは、チケット入手が超難関。地元シャルカーでもなかなかとれないチケットを、外国人のいちげんさんがどう入手しろと。
 「で、シャルケはなんで勝てないんでしょう?」と訊いてみる。昨シーズン、リーグ2位という成績でCL出場も決めたシャルケは、新シーズン開始以降、リーグ戦でもCLでも全て黒星。勝利どころか引き分けすら無い厳しい状況にあった。
 「うーん、人をいっぱい入れ替えて、それがまだフィットしてないんだろうね」とマルクスさん。
 「ハイコ・ヴェスターマンもHSVに行っちゃいましたね。キャプテンだったのに…」
 「ああハイコ!とても残念だよ」マルクスさんは、心底残念そうに言った。
 あまり明るくない話題に若干トーンダウンしたところで、突然マルクスさんは気分転換するかのように「で、君はどこの試合を見るんだっけ?」と訊いてきた。うお、今更なにを。
 「…レバークーゼン対ニュルンベルクです」
 「それから?」
 「レバークーゼン対フランクフルト」
 「…あとは?」
 「シュツットガルト対レバークーゼン、もう一つはツバイテの試合で……」
 「……」
 正直に答えるほど墓穴を掘っているのは自覚していた。今の今までドメスティックなシャルケの話で盛り上がっていたのは一体なんだったのか。マルクスさんは苦笑しつつ問う。
 「君もしかして、レバークーゼンのファン?」
 「……ハイ」下を向いて答える。
 「あー!ほらちょうどバイアレナだ!」いきなりマルクスさんは窓の外を指す。
 「ええっ?」
 なんという恐ろしい(?)偶然か、列車はまさにレバークーゼンミッテ駅を通過し、車窓からは木立に紛れてレバークーゼンのホームスタジアム、バイアレナの姿が。マルクスさん爆笑。
 ということは、もうすぐデュッセルドルフだ。
 
 「いやー、すっごく楽しかったよ!」
 最後の最後で思いっきり墓穴を掘ってしまった日本人に、マルクスさんは優しかった。
 席を離れるところで「良い旅行を!」と声をかけてくださり、ホームに降りて列車の方を見ると、窓越しに、満面の笑顔で手を振ってくれた。
 
 なんというか、そうだ、フスバル万歳(……あれで良かったのだろうか)。 
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by terrarossa | 2010-10-13 02:58 | サッカー | Comments(0)


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